2022, 30(5):13-25.
摘要:
北海道のもち米は,従来,硬化性が低く硬くなりにくいため,おこわや和菓子などに向く。しかし,東北以南の銘柄もち米に比べ,精米蛋白含有率(蛋白質)が高く,精米白度や搗き餅の食味が劣っていた。さらに,近年には需要を広げるため,切り餅・成型餅および米菓に向く搗き餅の硬化性が高い品種の育成も要望された。そこで,新品種の早期開発のために世代促進栽培や葯培養を行い,選抜効率を高めるため初期世代から玄米と精米の白度,蛋白質および硬化性と関係がある糊化特性の機器による分析を,また少量もち米による硬化性を実測し,さらに中期世代からのおこわや搗き餅の食味試験などを行い,農業形質とともに品質改良を進めた。その結果,近年の育成品種では粒大が大きく,穂ばらみ期と開花期の両障害型耐冷性も強く生産の安定性が向上した。さらに,育成年次が新しい品種ほど蛋白質が低く,蛋白質と負の相関関係がある精米白度が高くなった。また,おこわや搗き餅の食味も向上した。一方,搗き餅の硬化性については,従来の低い品種だけで無く,粳品種を母本として硬化性が高い品種も育成された。しかし,東北以南の銘柄もち米には搗き餅の食味や硬化性の高さがまだ及ばず,さらに改良を進める必要がある。