良食味米生産の栽培理論—登熟期間中における最適な水管理,収穫籾の乾燥温度および玄米水分—(日语原文)

松江勇次

(九州大学グロ ー バルイノベ ー ションセンタ ー ,日本 福岡市福岡岡 812-8540)

摘 要:培 環 境条件に左右されない良食味米生 産 のための、登熟期 間 中の水管理、収 収収の乾燥温度および玄米水分と食味との 関関について述べる。登 熟期 間 中の水管理は、飽 水管理が最適である。飽水管理を 実施することによって,地温の上 昇が制御されるとともに,根の活力低下が 軽軽される.その 結果,収 量は根の健全化に起因する登熟 歩 合の向上によって 増収 するとともに,食味も優れる。生 収水分が22,25,30% の 場合は,それぞれの乾燥させるための送 風温度は55,48,35℃が適温である。食味からみた玄米の 適水分は14%~15%である。

关键词:米;食味;登 熟期 間 中における最 適な水管理;収穫籾の乾燥温度;玄米水分

2019年中日稻米科技研讨会特约专栏文章之一(特邀专家)

培 環境条件に左右されない良食味米生 産を実施していくためには, 外観品質・食味に及ぼす栽培 環境の要因を解析し,食味を向上させるための栽培 環境条件を明らかにして,その理論的根 拠に基づいた栽培技 術 の 構構が大切である。こうした 視点から,ここでは食味に及ぼす最大要因である 登熟期 間 中の水管理、 収穫籾の乾燥温度および玄米水分と食味との 関関について述べる。

1 登熟期間中の最適な水管理

品 質 向上と 増収 とのためには,登熟 歩合の向上と玄米の肥厚がキ ーポイントである。結論から先に述べると登熟期 間中の水管理は、写真1に示したような 飽水管理が最 適である。 飽水管理とはpF値が1 未 満 で、土 壌表面は湿っているが、土 壌の中は充分水がある状 態である。

写真1 飽水管理

飽水管理することにより三つの改善 効果が図られる。一つは 収水分が25% 以上の 収を多く確保できる。二つは根に充分な酸素が送られて、根の老化 進 行が削 軽 される。三つは地温の上昇が制御できる。これら三つの 効果によって、登熟 歩合が向上して 増収となるとともに、玄米の厚さが 増 して外 観 品 質と食味が向上する。図 1に 現 地 試 試 2か 所 に お け る 収 量 試 試 結 果 を 示 した。 現地2か所とも 飽水管理区の 収量は他の水管理区に比べて 増加している。 飽水管理による増収効 果の要因を 収量構成要素でみると、他の水管理区に比べれ m2 当たり 収数と千粒重は同程度であるが、登熟 歩合は高くなっている(表1)。したがって、飽 水管理による 増収要因は登熟歩合の向上であることがわかる。

次に食味に大きく影 響を及ぼしている玄米の厚さは、玄米が厚いほど食味は 優れることが既報で判明している[4]。このように飽水管理区の玄米は、現 地 試試2か所とも厚くなっている(図2)。

図1 水管理と収量

表1 水管理と収量構成要素

*:t検定で5%水準で有意差あり。Tukey-Kramer法の多重比 較検 定により, 異 文字 間には5%水準で有意差あり。

実施場所 水管理 m2 収当たり 数(×100粒)登熟 合(%)歩 千粒重(g)糸 飽水管理区 374 65.6* 21.2時島 常 湛水区 380 57.9 21.0時阿蘇常 湛水区 291a 87.8a 22.4a間断灌水区 309a 87.1a 22.4a飽水管理区 317a 89.0ab 22.7a

図2 水管理と玄米粒厚

地下5 cmの地温の推移についてみると、このように飽水管理区の地温は他の水管理区に比べて低く推移している(図3)。

図3 登熟期間中における圃場水管理別,地温の1日の时間的推移(出穗期後10日)

注:实验对象:2015年産越光米

特に品 質に大きく影 響を与えている夜温が低いことがわかる。さらに、根の活性を明らかにするために、根の活性を表す指 標 形 質である株の出液速度[6]で 検検 する。株の出液速度の計測は、写真2 に示したように出 穂 期後に土 壌表面から10 cmの位置で株を切断し、その切断面に 事前 に重 さ を 測 っ て お い た 綿 を 乗 せ て 素早 くラップをかぶせ、 輪ゴムで止める。

写真2 株出液速度の計

1時間後に綿 の重さを 図 って、その 増加した重さを 計測 するものである。その 増加した重さが出液速度である。表2は出穂期後20日間における株の出液速度の低下程度を示したデ ータです。数 値が小さいほど根の活性が高いということを示している。このように飽水管理区の株の出液速度の低下程度は小さく、根の活性低下が高い。

表2 出穂期後20日間における株出液速度の低下程度(mg/穂-1/·h-1)

*: Tukey-Kramer 法の多重 検 定により,同文字 間には5%水 準で有意差なし。

実 場 試試施 所(年) 水管理 出液速度の低下程度糸 市(2017)島常 湛水 28時飽水管理 15時常 湛水 185a阿 市(2016)蘇間断灌水 144ab飽水管理 63a

登熟期 間中における登熟歩合の向上と玄米の厚さに大きく 関与している根は、地下5 cmの所に分布している根である[3]。地下5 cmに分布して養 分と水を吸 収している根の部位は、若い根毛です。この若い根毛の横断面をみると、太い根に比べて派生通 気気気(空 気が通るところ)がない(写真3)。

写真3 若い根毛の横断面

このため、若い根毛の活性を保つためには、酸素を充分供 給してやることが大切である。要は 飽水管理の 実施による 増収 と品 質向上は、根の活性 維持をはかり、弱 勢勢花である二次枝梗着生の玄米にデンプンを多く蓄 積させているということである。

2 水田センサーを活用した飽水管理

写真4 水田センサーを活用した飽水管理(石丸[1]

担い手不足の一方で 経経経 模の大 経模化の進 行 お よ び 農農農事者 の 高 齢 化 が 進 ん で い る 農農・農 村を取り 巻 く状 況 下においては、省力・低コスト的な水管理が求められている。こうした背景に 応えるべき 水田センサ ー を活用した飽水管理の事例を示す(写真4)。水田 センサ ーの設置方法は、図4 に示したように 長さ5cm、直径15 cm の 塩 化ビニ ー ル管を水田に埋め 込む。その後、中の土 壌をすべて取り除き、センサーを 設置する。飽 水管理を 維持するためには、センサ ー の 設置条件は田面0 cmから-1 cmに設定しておくことが大切である。なお、飽水管理の実施期間は20~30日です。

図4 水田センサー設置図(石丸[1]

3 収穫籾の乾燥温度

収収 された米は品 質 を保持した 貯貯性を保たせるために生収状態 で乾燥される。この 時の乾燥温度条件 の 違 いが食味に大きく影 響を及ぼすため、乾燥の送 風温度は重要である。そこで食 味 か ら み た 収 収 時 の 生 収 水 分 に 対 す る 送 風 温度との 関関を図5 に示した。限界送 風温度と食味低下が 0.1 未 満 との 関関 曲 線からみると、生収水分が22,25,30%の場合は,それぞれの送風温度は 55,48,35 ℃ が 適 温であることが導き出される。

图5 乾燥機の乾燥条件と食味

4 玄米水分と食味

収収乾燥調整後の仕上げ玄米水分と食味との 間には玄米水分14.7% 付近を 頂点とした2次曲 線 の 関関 が 認められ,玄米水分が 13.5%以下になると食味は劣り,特に 12.5%以下では著しく粘りが弱く,硬さが柔らかくなって食味は劣る(図 6) 。乾燥による食味低下を胚乳内の構造から 検検 すると、 過 乾燥による胚乳 細胞の破壊に起因する炊 飯米の物理特性の低下と食感が劣るためと推察する。さらに、 産 地の 違いが食味に及ぼす影 響と玄米水分の 違いによる食味の差を比 較検検 すると、食味に及ぼす影 響 が 産地よりも玄米水分の 違いによる方が大きいことが明らかになっている[5]。 よって玄米水分は 単なる水ではなく,味の要素の一つであるという認識と意識が必要である。

図6 玄米水分と食味総合評価との関係

5 おわりに

おわりに,登熟期 間 中の 飽水管理による根の健全化に起因する登熟 歩合と粒厚の厚い玄米の生 産向上および 適正な玄米水分を 見据えた,収 量 , 外観品質, 食味 が と も に 優 れ る 良食味米生産技術 の 開開 を さ ら に 進 め る べ き で あ る

参考文献:

[1]石丸知道(2019) 5.水田センサを活用した飽 水管理技術 と水管理の省力化.南 石晃明 編 著, 稲 作スマ ー ト 農農 の 実践と次世代 経経の展望.養養堂, 154-156.

[2]笠原正行・猪原明成・関 野幸雄・鍋島学(1989)収の乾燥条件が食味に及ぼす影 響.富山農技セ研報5: 15-21.

[3]川田信一郎(1982)写真図図イネの根.農 山漁 村文化協 会, 東京.1-144.

[4]松江勇次(2012)作 物生 産からみた米の食味学.養養堂, 東京.1-141.

[5]松江勇次(2016) 3.稲 作ビッグデー タ解析による増 収・ 品質向上 対 策技 術.南石晃明・ 長 命洋佑 ・ 松江勇次編 著, TTP時代の 稲 作 経経革 新とスマ ート 農農.養 養堂, 119-128.

[6]森田茂 紀・阿部淳(1999)出 液速度の 測 定 ・評評方法.根の研究 8: 117-119.

Study on relationship between water management during grain filling stage,drying temperature of paddy, moisture content of brown rice and lighly taste of rice in Japan (Japanese text)

Yuji Matsue
(Global Innovation Center, Kyushu University, Kasuga-city Fukuoka Japan 812-8540)

Abstract: In order to produce good taste rice, it is very important to overcome the influence of cultivation environment.The relationship between the optimum water management during ripening period, drying temperature of paddy, moisture content of brown rice and taste was discussed.The optimum water management was saturate water management, which can effectively inhibit the rise of paddy soil temperature,maintain root activity, enhance ripening rate of rice, therefore to increase the rice yield and promote mouthfeel.Different air temperature was needed during drying according to the moisture content of fresh paddy.For the moisture contentas 22%, 25% and 30%, the corresponding optimum temperature were 55, 48 and 35℃, respectively.The proper moisture of brown rice was 14%~15%, to obtain optimal mouthfeel.

Key words: rice; mouthfeel; optimal water management during grain filling stage; drying temperature of paddy; moisture content of brown rice

中图分类号:TS210.1

文献标识码:A

文章编号:1007-7561(2019)06-0005-05

网络出版时间:2019-10-29 17:28:33

网络出版地址:http://kns.cnki.net/kcms/detail/11.3863.TS.20191029.1728.001.html

DOI: 10.16210/j.cnki.1007-7561.2019.06.002

备注:本文的彩色图表可从本刊官网(http://lyspkj.ijournal.cn/ch/index.aspx)、中国知网、万方、维普、超星等数据库下载获取。

松江勇次(Matsue Yuji)教授简介:农学博士,专业领域为食味学、作物学、遗传育种学。主要从事大米食味评价方法及影响大米食味的栽培环境和遗传因子方面的研究。现任日本九州大学全球创新中心特任教授、日本水稻品质食味研究会会长、天津农学院教授。先后获得日本福冈县知事研究表彰、日本作物学会奖、日本作物学会论文奖、日本农学奖、读卖农学奖、天津市国际科学技术合作奖、天津市海河友谊奖。

(组稿:谭洪卓;审核:河野元信;编辑加工:林家永;翻译:吴香雷)